「自分たちでランドセルを作るまで」ことゆく社 ロングインタビュー最終回

浜松に住む2人のママが、これまでなかった新しいタイプのランドセルを作りました。『ことゆくraccu(ラック)』と名付けられたそのランドセルは、子を想う親たちの共感を呼び、広く注目を集めています。そんな『ことゆくraccu』の生みの親であり、『合同会社ことゆく社』の共同代表でもある、影山恵さん、和久田麻衣さんにお話を伺いました。


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第1回 ことゆく社が生まれる前の話①「ありそうでないもの」を見つける仕事
第2回 ことゆく社が生まれる前の話②「自分で探して、自分で作る」
第3回  2人でランドセル作りを始めた理由
第4回 ビジネスコンテストとクラウドファンディング


【最終回】原動力と描く先


求めている人に、届けるために。

家事や育児と両立しながら挑戦を続けてきた和久田さんと影山さんですが、2人を動かすパワーの源って何だと思いますか?

影山:んー、自分が「こういうのが世の中にあったらいいだろう」と思って作ったものが、感謝されたり喜ばれたりすること。《人に喜ばれること》が素直に嬉しくて、それが今に繋がっている気がします。 

和久田:私は接客もモノを作ることもどっちも好きで。『ことゆくラック』を使ってもらって、それが世の中に広がっていったら、すごく幸せだなと思います。誰かが困っていることが、私たちが作ったもので解消したらいいなーって。


実際に『ことゆくラック』を選ぶ人は、どんなことに困って買いに来ますか?

影山:一番は《重さ》です。年々、厚みが増し、重くなっている教科書に加え、水筒や体操服、プールバッグや書道セットなど、使うたびに持ち帰るものも含めると、子どもたちは小さな体ですごい重さのものを持って通学しています。家から学校が近い子ならまだしも、遠い距離を歩いて通う子はすごい負担ですよね。

確かに、大人でもビックリするほどの重さですもんね。では『ことゆくラック』の一番の特徴は《軽さ》ですか?

影山:はい。770gという軽さで、よくある革や合皮のランドセルよりも500g以上軽く仕上げています。また、革に比べて素材がやわらかいので、教科書以外にも体操服袋や水筒など、たくさん荷物が入るんです。(以下画像参照/ことゆく社HPより)


ランドセルに荷物がたくさん入れば、両手があくので安全ですよね。

和久田:そうなんです。ランドセルを背負って、プールバッグや傘、絵の具セットなどを両手に持ち、走っている子を見ると「転んでも手をつけないだろうな」ってハラハラします。今、『ことゆくラック』を購入してくださっている人のほとんどが、子どもが小学校に通い出してから《買い替え》に来る方なんです。もっと早くから知ってもらえていたら、余計な負担を減らせたかもって思ってしまいます。

最初に買ったランドセルの費用を考えると…もったいないですよね。

影山:そうなんです。それでも、我が子から「ランドセルが重くて背負いたくない」とか「体が痛い」と苦痛を訴えられると、どうにかしてあげたいと思うのが親心なんですよね。もっとみんなに使ってもらって、『ことゆくラック』がランドセルの選択肢のひとつとして定着するといいなと思います。

子どものことを一番に考えて作ったランドセルですもんね。

和久田:「子どもと歩んでゆく」「子どもに寄り添ってゆく」そんな想いを込めて名付けたのが『ことゆくラック』です。古語に『事行く(ことゆく)』という言葉があり、「物事がうまく運ぶ」「納得がゆく」という意味もあると知り、社名にも使いました。

「この形しかないから」じゃなくて、納得して選んでほしいですよね。今後の活動として考えていることはありますか?

影山:必要としている人のところにもっと届けたいと思っています。学校で『ことゆくラック』を使う最初の1人になるのは少し勇気がいるかもしれませんが、学年で1人でも使っている子がいたら「それ、どこの?」と広がっていくと思っています。

和久田:ひとつの点があればきっと広がると思うので、整骨院や保育園に案内を配るなど、その方法を考え中です。

商品のカラー展開を増やす予定は?

影山:いつでもすぐお渡しできるように定番の4色(赤、黒、紺、茶)は在庫を保ちつつ、最近、受注生産で注文いただける新しいカラーもいろいろ作ったんです。やっぱり女の子はピンク好きの子が多いので、革のフチ巻き部分をピンクにしたバージョンとか…。(※ホームページにて注文可能)


和久田:茶色とピンクの組み合わせは、実際にお子さんたちとたくさん話してリクエストが多かったことから登場させた新カラーなんですけど、とても好評なのですごく嬉しいです。

影山:サイズも高学年用に大きいものを作ろうと今、動いています。そもそも、成長期の子どもが1サイズで6年間使うこと自体が不自然なので。大人の方から「私が使いたい」と言われることも多いので、大きいサイズはリュックとして大人も使える商品になる予定です。

それは楽しみですね! 最後に、『ことゆくラック』はどこで見ることができますか?

和久田:浜松市南区にある『ことゆく社』のオフィス兼ショールームのほか、浜北区の『ぬくもり工房』、中区の『シンプリィ・ショップ』、『遠鉄百貨店』5階のランドセル売場でも置いていただいています。ぜひ試着して、納得して選んでもらえたら嬉しいです。


●合同会社ことゆく社 オフィス兼ショールーム

静岡県浜松市南区田尻町112
営業時間 11:00~16:00
定休日 月曜日

●ことゆく社・ことゆくラックについてはコチラ
https://www.cotoyukuraccu.jp/


【ロングインタビューを終えて】

『あたりまえ』を疑って、毎日子供たちと接する母親目線で『本当にいいと思うもの』を作り出したお二人。みんなと同じが安心する、人と違うことを「変」としがちな日本の社会の中で、それって簡単なようですごく難しいことです。でも、そんな視点をもつことから、新しい商品が生まれていくのだと改めて感じました。取材者の私自身も母という立場に立つと、我が子には『これが普通だから』じゃなく『本当はこれがいい』という自分の気持ちを大切にしてほしい。最初から諦めていることを一度疑い、自分の本音を見つめることで、可能性は無限に広がるんだと知ってほしいから。

また、お話して魅了されたのは二人のお人柄。起業する女性はバリバリのキャリアウーマン!というイメージがありますが、和久田さんも影山さんも、全然気負いがなくて、すごく自然体。同じ想いを描きつつも、臨機応変に役割分担されている姿に女性らしい柔軟さを感じました。和久田さん、影山さん、貴重なお話をありがとうございました。浜松から生まれた新型ランドセル『ことゆくラック』を、より多くの人に知ってもらいたいと心から思います。(文/島津順子)

浜松駅南local media「ほしの便り」

静岡県浜松駅南で毎月第2日曜日に開催している『浜松サザンクロスほしの市』を拠点に、この地域の魅力的な人・もの・こと、駅南エリアの情報を発信しています。

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